2014年12月30日

テレサ・カレーニョの館でジルヴェスターコンサート

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     (テレサ・カレーニョ)
明日、大晦日はドレスデンの郊外にあるコスヴィックという町で夜10時からリサイタルを行います。ゆく年くる年を聴衆の皆さまと一緒に過ごすジルヴェスターコンサートです。
この旧東ドイツの町にはベネズエラ出身の大ピアニストテレサ・カレーニョが住んでいました。アントン・ルビンシュテインの弟子であった彼女は「ピアノのヴァルキューレ」と称され、当時やはり女流ピアニストとして名を馳せたアンナ・エシポヴァの華奢な演奏とは対照的な存在でした。(彼女たちはいずれも私の本『ロシア・ピアニズムの贈り物』に出てきます。)

テレサ・カレーニョの夫であったオイゲン・ダルベールはリストの弟子で、やはり大ピアニストでした。彼ら夫婦の住んでいた館は、現在コンサート会場として使われており、明日のコンサート会場です。
ところで、カレーニョの駆使した重量奏法については、クラウディオ・アラウが絶賛しています。力を極限まで用いて男性的な音を出した彼女ですが、その演奏は柔軟性と軽妙さに溢れていたといいますから、理想的なピアニストだったわけです。『アラウとの対話』(みすず書房)の中でアラウは彼女について沢山語っていますから、ご興味のある方は是非ご一読下さい。

この会場で弾くのは2度目ですが、夜10時にリサイタルというのは人生で初めてのこと。一体何が起こるのか、楽しみです。
今年最後の動画として、テレサ・カレーニョの弾くリストのハンガリー狂詩曲第6番をお聴きください。


皆さま、どうぞ良いお年をお迎え下さい!
posted by 英代&フレンズ at 09:09| 日記

2014年12月29日

塩田剛三の円運動

手も身体も小さい私は、いかに効率よく身体を使うかということの研究に高校生の頃から余念がありませんでした。それは高校一年のとき、ひどい腱鞘炎を患った所為でもありました。力を抜きなさいということを教えられても、指を広げる緊張が手に走るのにいかにすれば脱力できるのかは教わることがありませんでしたから、自分で見つけていくしかなかったのです。

メルジャーノフ教授に弟子入りしたとき、彼の奏法ならば私にも多くの不可能だったことが可能なるであろうと希望の光が射し込むのを感じました。といっても、それを身につけるのは容易なことではありませんでしたが。
彼は腰を使うこと、胸の筋肉を使うこと、強音は全身の重みを使うことなどを教えました。そして口にはされませんでしたが手首の柔らかさを演奏で見せて下さっていました。そして、指使いも彼ならではの独創的なものを教えて戴き、大いに助かりました。しかし、彼の手の柔軟さは、とにかく凄すぎ!どうしてもメルジャーノフ教授のようにはいかないのです。
何が問題なのか。観察していて気づいたのは、私の手が小さいため、手首の角度を人一倍多く変えていることでした。そんなとき、巡り合ったのが合気道の達人、塩田剛三の動画です。

小柄な塩田氏は師で合気道の創始者植芝盛平(彼も大変小柄でしたが)の足の動きを観察し、重心移動の研究に取り組んだそうです。また、金魚鉢の中を泳ぐ金魚の動きを観察し、それも金魚鉢をポンとたたいたときの金魚のUターンする動きを観察して、円運動を発見。塩田剛三はそれを応用していたようです。

この円運動を応用してみたところ、手首の柔軟性のアップに役に立ったのです!手首の角度を変えるということは、手首の左右の動きが柔軟である必要がありますので、その動きを円運動と感じるとなめらかにいくようになります。もし手が小さくてお困りの方がいらしたら、試してみて下さい。

塩田剛三の円運動について示した動画がありますので、お楽しみください。

posted by 英代&フレンズ at 06:08| 塩田剛三

2014年12月28日

メルジャーノフ教授の手

メルジャーノフ教授の手は不思議な手でした。鋼鉄の如くがっしりし、しかも柔らかさに包まれた手だったのです。いつか私の腕の上で指一本の強さをデモンストレーションなさったとき、その打鍵はまるで腕に穴があくのではないかと思うほどの強さにビックリ!あの深い音はそこから出ているのだと実感しました。

彼が弾いている手を見ていると、まるで指が動いていないかのように見えます。教授にお聞きすると、
「ロシアの奏法とは、指を動かすことと重量を使う両方を駆使することだ」
との答えが返ってきました。
つまり、まるで指が動いていないように見える彼のテクニックは、実は指が自由自在に動いてこその賜物なのです。そうでなければ、あれだけ一つ一つの音がクリアに聴こえてくるはずがないのです。では、どうなっているのか?

彼の演奏中の手を見て気づいたのは、彼の手は、指と指の谷間の部分が実に柔らかいということでした。これは憶測ですが、あの谷間の部分が柔らかいということは、指が上下のみならず、左右にも微妙に、かつ絶妙に動いていたと思われます。1994年に教授が東京と大阪で公開講座を開かれたとき、東京音大でも公開講座及びミニリサイタルが開かれました。この日、ラッシュにあってなかなか動かない車の中で、”リハーサルする時間がない”と関係者一同イライラ・モードになってきたとき、私は咄嗟に教授の手を取って彼の指のマッサージをしていました。そしてその時、この指の谷間の部分の柔らかさに気づき、なるほど!と思ったものでした。

メルジャーノフ教授は自分の手に全面信頼をおいていらっしゃいました。
「手がすべてを教えてくれる。弾き方がわからなくなったら、手に訊きなさい。」
教授が良く口にされた言葉でした。
82歳まであと2か月というご高齢で演奏された録画で、手がご覧いただけます。



posted by 英代&フレンズ at 05:42| メルジャーノフ