2015年01月11日

意識するのは落下運動か、引力か?

メルジャーノフ教授は重量奏法を教えるとき、「重みをかけろ!重みをかけろ!」と言い続けられましたから、「重みをかける」という言葉から、私は鍵盤に重みを落とす「落下運動」を重要視してきました。そのことを、私のパートナーで友人の女優コリンナ・ハーフォーフさんに言うと、彼女が言いました。
「ヒデヨ、物が落ちるということは、引きつける力があるからなのよ。引っぱられる力を使おうと思ったらどうなるかしら?」

『アラウとの対話』(みすず書房)に著者のジョーゼフ・ホロヴィッツの解説があります。
「緊張した腕や肩、あるいは、(...)硬直した指は、自己表現を妨げる。(...)このような緊張を避けるために自然の身体の重みに頼る、それが自分の基本的な方法であると、アラウは結論した。鍵盤を力ずくで抑えつけるのではなく、引力にその仕事をまかせてしまうのである。」
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このホロヴィッツ氏の描写の巧みさといったら何と素晴らしいことか!そしてまた、これは訳された野水瑞穂さんの見事な翻訳にも負うところが大きいでしょう!

メルジャーノフ教授も絶賛していらしたアラウの演奏。アラウの演奏姿を見ていると、見ている方も体中の細胞が弛緩し、皮膚の細胞から彼の音楽が流れ込んでいるような気になります。
ほんのちょっとした言葉の使い方が、大きなヒントを与えてくれますね。
posted by 英代&フレンズ at 05:57| アラウ